静岡大学|若返り効果が期待されているNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を生産する乳酸菌を発見

静岡大学学術院工学領域・吉田信行准教授の研究グループは、若返り効果で今注目を集めている化合物「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」を生産する乳酸菌を発見したと発表しました。

同成果は、静岡大学術院工学領域の吉田信行准教授らの研究チームと、静岡大グリーン科学技術研究所、大阪ソーダとの共同研究によるもので、国際科学オンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載されました。

NMNは、ワシントン大学の今井眞一郎教授らの研究において、ヒト年齢で約60歳のマウスに1週間NMNを投与すると、ヒト年齢で約20歳の運動能力や外観を示すまで若返った、と今一番注目されている物質です。

【NMNを生産する微生物を効率よく探索するための工夫点】

●菌体の中よりも外に分泌したNMNを検出する方が都合がよい
●NMNは構造上、細胞膜透過性が悪いことが予想されたので、NMNからリン酸基を除去したニコチンアミドリボシド(NR)を生産するものを見つける(NRもNMNと同様の効果があることは報告されています)
●NRがないと生育しないような酵母(NR要求性酵母)を使用したバイオアッセイ系を構築する

まず、NR要求性酵母を個体培地に薄く塗っておき、その上に乳酸菌を接種。
もし乳酸菌がNRを生産していれば、その乳酸菌の周りにNR要求性酵母が生育します(図1)。

出所:静岡大学

このような効率の良いスクリーニング系を構築し、174株の乳酸菌から3株の候補株が得られたという(図2)。

この属の乳酸菌は花によく生息しており、フルクトース(果糖)を要求することが知られています。
フルクトースを添加することで、各候補株の生育が格段に良くなることも確認されたという。

なお、これらの候補乳酸菌は菌体外にNMN(およびNR)を分泌するが、フルクトースを添加すると菌体内に蓄積することが確認されたことから、乳酸菌製剤としての応用が可能であることが示されたとする。

ただし、現在のNMNの生産量は、培地1リットル当たり数mgであり、工業生産のためにはさらなる生産性の向上が望まれることから、さまざまな検討を進めているとする。

また、乳酸菌候補株のうち1株のゲノム(全遺伝子)を解読したところ、候補株がなぜNMNを生産できるのかがわかってきたとしており、その特徴はほかの微生物にはないものであるため、基礎微生物学的にも興味ある知見だともしている。

プレスリリース【若返り効果が期待されているNMNを生産する乳酸菌を発見】

まとめ

NMNは、ワシントン大学の今井眞一郎教授の研究発表によって、世界中でNMNの若返り効果に関する研究が行われており、その抗老化メカニズムは科学的にも証明されてきています。

そのため昨年から今年にかけて、NMNサプリメントなどを販売するメーカーが多く登場していますが、まだまだ高価な原料ということで価格的には日常的に手にできる人が限定されています。

まだ研究段階ではありますが、こうした発見により近い将来、NMNが手軽で安価に手に入れることのできる化合物となれば、人類が等しく健康的なまま長生きできるようになるのも夢ではないのかもしれません。

最近はNMNに関する情報が多く出てきています。
今後もNMNに関するプレスリリースは見逃せないものになりそうです。